褥創(床ずれ)は、英語では pressure sore と呼ばれ、その本態は体重によって生じる圧力(体圧)が、殿部などに集中し、その部位の皮膚や皮下組織に生じた虚血性壊死です。褥創というよりも床ずれと呼んだ方が一般的です。 私たちは同じ体位で長時間寝ていたり、同じ座位で座っていると、痛みや不快感から無意識に身体をずらすなどして対応しています。我々は知らず知らずのうちに寝返り(15分間に1回)をうつなどして対応しています。脊髄損傷・脳卒中・さまざまな原因による意識障害などにより、寝返りをうつことが出来なくなると、褥創(床ずれ)が生じてしまいます。 それでは褥創(床ずれ)の好発部位と、人体の骨格を比較してみます。
臥位では、脊柱は肩甲部と殿部で凸、腹部で凹の彎曲をしているのが解ります。
殿部の骨格を詳しく見ていくと、仙骨(仙中隆起)部、仙腸関節部が突出しているのが解ります。
側臥位では、大転子部や肘が突出しているのが解ります。
座位では、両側の坐骨結節部が突出しているのが解ります。
また腹臥位では、膝関節部胸部、顔面が突出しているのが解ります。
圧力の単位は、g/c㎡、gK/㎡などと表示されます。これらはそれぞれ1c㎡や1㎡にどれだけの重さが、かかっているのかを示しています。ところが血圧の単位では、mmHgなるものが使われており、分かりにくくなっています。Hgとは水銀のことで、水を1とした時、水銀は13.6の重さがあります。これを比重と言います。学生時代の物理を思い出してみて下さい。たとえば血圧100mmHgは、13.6×100=1360mmH2Oということです。つまり100mmHgの血圧は、水銀なら10cm,水なら136cmの圧力で、つり合う事ができます。ちなみに毛細循環の血圧は、32mmHg(32~35mmHg)と言われています。つまり32×13.6=435.2mmH2Oとなります。
仙骨部にかかる圧力と仙骨部から数センチ離れた部位での圧力を調べてみると、寝たきりで痩せており、仙骨部周囲の筋肉が萎縮していると、二つの部位にかかる体圧の差が著しくなります。このような場合に二点間の圧力勾配は、急と言います。二点間の圧力の違いは、そこに張力を発生させます。(二点間の張力の違いにより、生じる力を剪断力と言います。)殿部の筋肉(大・中・小殿筋など)は、体圧が仙骨部に集中するのを防ぐスポンジの役割をしています。寝たきりになると、CT画像のように骨突出部位周囲の筋肉が萎縮します。このためにさらに仙骨部に体圧が集中し、褥創がおこりやすくなります。殿部の筋肉が萎縮していない健常者では、筋肉がスポンジの役割をはたすため圧力勾配は、緩やかで褥創がおこりにくいといえます。